「ベターの追求」で成長する企業の組織哲学:株式会社ニシタニ 西谷春樹氏

「ベターの追求」で成長する企業の組織哲学:株式会社ニシタニ 西谷春樹氏

会社名:

株式会社ニシタニ

所在地:

〒519-2145 三重県松阪市射和町1330

代表取締役:

代表取締役社長  西谷 春樹

従業員数:

273名(2023年4月現在)

設立:

2001年 8月  (創業:1990/7月)

Q.御社の現在の事業内容について教えてください

「自動車用のゴムホースの製造加工から物流業務ですね。製造加工に関しては、ラジエーターホースやガソリンの給油口からタンクまでのホース、ブレーキホースなど、色んな種類のゴムホースを取り扱っています。製造のメインはガソリンタンクの給油口のホースで、加工業務については住友理工さんの協力会社として、お客様が製造されたものを加工している形です。基本的には加工業務が多いですね。

物流の方は、住理工ロジテックさんの協力会社として、住友理工さんで製造されたもの、住友理工さんの協力会社さん等で作ったもの、弊社が加工したものが住理工ロジテックさんの倉庫に入り、そこから各工場に出荷される、という流れです。国産車に乗っておられる方は、弊社と間接的なつながりがあるかもしれませんね。」

Q.御社の採用や教育など、組織運営のこだわりは何ですか?

「総務の担当者が懸命に様々な取り組みをしてくれていて、基本的にはできる限り色んな方が働ける職場づくりを意識しているつもりです。障害者の雇用も広げていますが、もちろんなかなか難しい部分もありまして、一口に障害者といっても当然一人一人本当に色が違うので、トライアンドエラーで失敗しながらも諦めずにやってるというのが実情ですね。

また、高齢者の雇用にも力を入れており、生涯現役を目指して70代、80代の方にも働いてもらっています。ただ、やはり視力が低下してきますし、転倒のリスクといった労災の問題もあるため、労働局へ足を運ぶなどして、難しい部分がクリアできるように日々工夫しているところです。

我が社は行動指針として”ベターの追求”を意識しておりまして、採用活動に対してもこのスタンスをとっています。こうしたことから、継続して働きたいという思いがある人が働ける職場づくりに取り組んでいきたいと考えて努力しているのですが、やはり民間では限界があり、当然そうした方々全員をカバーするというわけにはいきませんから、国としても調整に力を入れてほしいですね。」

Q.会社経営、組織運営についての哲学やポリシーを教えてください

「正直なところ組織としてはまだまだ苦労しているのですが、一番大切にしているのはQCサークル活動で、これを会社の土台作りにしているイメージです。各部署で色が出てくるのが面白くもあり難しいところで、人数が増えていく中での組織運営について考えさせられますね。みんなが自主自立で動く会社が理想的ではありますが、現実的にはピラミッド型の組織運営が必要な部分もありますので、ティール組織ではないですが、良い部分を活かす形でやっていけたらと思っています。

また、どうしても製造業、中でも特に弊社のようないわゆる下請け方式ですと、やはりピラミッド型の良い部分で運営されている部分が大きく、結局はそこを強化していかなければいけないという課題に直面しているところです。一人一人が考えるベストな動きと全体最適はやはり違いますから、私が考えるベストであっても部分最適になることはもちろんあって、そこをどう極力ピラミッド組織ではない形で全体最適にしていくのか、それができるのかという葛藤を抱えて試行錯誤しています。

哲学やポリシーに関しては、行動指針である”ベターの追求”がそれにあたるのかなと思いますが、これを定めたきっかけはトヨタ自動車の方からご指導を受けたことでした。弊社はお付き合いのある会社から指導に来ていただくことがあるのですが、トヨタ自動車の方がまずはベターだと、ベストは当然ベストとして、とりあえずベターで行動しなければ何も始まらないということを仰っていたんですね。

もちろん、「社長これどうですか?」と提案を持ってくる、それをみんながこれ以上ないというくらいまで考えて努力する、こうしたことは大切なんですけれども、要はあまりにもベストに拘りすぎたり正しいことを考えすぎたりすると、何がベストで何が正しいのかが判らなくなってしまうんですよ。この視点ではベストでも別の視点からはベストではない、そういう風に考えて一歩も踏み出せないよりは行動することが大切ですから、まあやってみようと、ダメだったら変えればいいから実行していこう、これをやったらベターだなという発想で一歩を踏み出しやすくしようという思いを”ベターの追求”という言葉に込めて、大切にしています。

自動車業界は縛りが多く、働いている人が疲弊しがちな文化がある中で、踏み出せないことも多いんですよね。弊社ではこれを意識することによって、厳しい中でもなんとか変えていきたいなと。脳が疲弊してくると視野がどんどん狭くなってしまいますから、まずは言葉として浸透させたいと考えました。よくある朝礼での唱和というよりは、常日頃からあちらこちらで話題にすることを心がけて続けていくうちに、会議やQCサークル活動でみんなが自然と口にしてくれるようになったという感じです。」

Q.御社の組織や社員の魅力は何ですか?

「弊社の行動指針は”ベターの追求”ですが、経営理念としては”新たなる挑戦”をスローガンとして掲げております。結局のところ気持ちとしてはベターを追求しながら成長し続ける、つまり生涯現役というイメージで、一生が学びだと思っているんですよね。その中でベターの追求をすることは、ある意味で新たなる挑戦ということではないかと捉えています。学びといっても知識の習得や技術の習得など色々ありますので、一人一人に合った学びでベターを追求することが幸せづくりにつながる、これが理想ではないでしょうか。

ベターの追求を強く意識して動いてくれる社員たちが結果的に班長や課長になっているので、成果としても現れているように思いますね。理念の浸透が行動につながっていて、思いを仕事で体現してくれているのが弊社の社員なのかなと。弊社はベストで凄く優秀な会社ではないのかもしれませんが、コツコツと謙虚に努力する素直な社員がいてくれることが強みなのかなと思っています。」

Q.御社のこれからの展望は?

「結果的に売上は上がってきているのですが、それほど拡大することを望んでいるわけではなくて、社員がやりたいことをバックアップできるような会社になっていきたいなと思っています。先程もお伝えした”新たな挑戦”として、社員が成長してくる中でやれることが増えてきた時に、一人一人の強みが活かせるように後押ししてあげたいですからね。

更にもう少し単位を大きく言うと、新たな事業部ができた場合なども同様で、色々な形で自社がスキルアップすることでお客様に貢献できるような行動がしていけたら良いなと。そうすることが、回り回って結果的に自社の発展につながっていくという風に思っています。弊社の経営理念には”お客様の満足をもとに”というものもあって、これはお客様から言われたことをやるという意味ではなく、自分たちから満足を提供できるということで、最初は少し首を傾げられたとしても、それが満足につながると思うなら、後で”良かった”と言ってもらえると信じられるのであれば、やれば良いと思うんです。

そういう意味での”もとに”という意味で、それを作り出せると信じられるかどうかですね。ただ、はなから弊社だけが得をして相手のためにならないことをやりたいとは思っていないので、あくまで”お客様の満足をもとに”を大切にしながら挑戦を続けて成長していきたいですし、社員もそれをすごく意識してくれています。だからこそ、意識してくれる社員の成長につながるように、一人一人の強みを活かせる会社になっていきたいなというのが展望ですかね。

一つの色に染めようとする会社もありますが、本当は沢山の色があって良いと思っていますので、”あそこの会社は訳わからん会社やな”と言われるような(笑)、それを活かせるくらいの器になりたいなと思っています。」