- 会社名:
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株式会社世古工務店
- 所在地:
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三重県鈴鹿市磯山 4-8-22
- 代表取締役:
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代表取締役 仁木雅之
- 資本金:
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3,000万円
- 設立:
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昭和35年(1960年)
目次
Q.御社の現在の事業内容について教えてください
「三重県鈴鹿市で建設業を営んでおります。コア事業が2つありまして、1つは地盤補強事業です。地盤を補強する工法としては表層改良、柱状改良、小口径鋼管の3つがメジャーなのですが、当社は国土交通省の認定工法として小口径鋼管工法を武器に事業展開しています。この業界では通常、製造は製造、施工は施工ということで分かれているのですが、当社の場合は鋼管杭の開発から製造および施工まで一気通貫して手掛けており、地盤のコンサルティング的な位置づけの会社です。
取引先は大手ハウスメーカーが中心で、積水ハウスさん、旭化成ホームさん、トヨタホームさん、パナソニックホームズさん等ですね。もちろん、地元のビルダーさんへもご要望に応じて当社の鋼管杭を提供させていただいております。
もう1つの事業は内装大工工事でして、積水ハウスさんの一次工事店として、大工工事から仕上げのクロス工事、水まわりの仕上げ工事、電気工事といった内装工事の一式を請け負っております。いわゆる基礎工事、躯体工事が外部工事だとすると、こちらは内部工事ですね。規定のマニュアルに即した形で施工して検査を受け、合格したものを積水ハウスさんへご提供する、という形です。」
Q.御社の採用や教育など、組織運営のこだわりは何ですか?
「新卒者の採用に当たっては、学生とのミスマッチを防ぐため、会社説明会で当社の根本理念や風土をしっかりと説明し、理解した上で入社してもらえるような採用活動を行っております。また、健康経営優良法人やホワイト企業認定、三重とこわか健康経営、その他SDGs関係の外部認定を取得して、同業他社さんや同規模の他社さんとの差別化を図る形での採用活動を心がけています。
更に、客観的に見てこの会社だったら子どもを預けられるなと親御さんに感じていただけるよう、独自の福利厚生制度”グッド制度”やリソースフルセミナー(人間力向上セミナー)などを通じて、人的な資本投資にも力を注いでいるところです。
教育につきましては、いわゆる技術職、特に技能工の中でも大工さんがどんどん減っており、若手大工の育成が業界の課題になっています。そうした中でも、当社は内装工事における大工さんの育成として、高卒の新入社員が積水ハウスさんの訓練校で知識や技術を習得できる体制を採っています。まず当社でマナーやモラル等の研修を受けてから、訓練校で半年間学び、また当社で約4年半から5年間ベテランの大工に付いて一から勉強させてもらった後に独り立ちする、という形の循環型育成カリキュラムが整っている環境は1つの特徴だと思います。また、雇用のダイバーシティ化として、生涯社員大工として働く道も設けています。
組織運営に関してですが、会社組織として何かを波及させていくことを考えた時に、トップダウンでもボトムアップでもない、中心から上下に向けての浸透が一番みんなのコンセンサスを得られると思っているんですよ。また、我々は幹部会議を通して会社の方針を決めていくのですが、やはり誰しも永遠の命があるわけではないので、次世代にバトンを渡していかなければいけません。
そうしたことから、ESG委員会も立ち上げました。文字通り、環境・社会・ガバナンスは、今後切っても切れない考え方だと思いますので、委員会メンバーが軸になってSDGs関連の目標、その他の社内目標やレクリエーション活動などについて、みんなで提案してみんなで取り組んでいくという仕組みを作った、これは自分の中でこだわった部分ですね。
また、この委員会は次世代を担う人選を含めた投資行為でもあります。リスキリングや体験型の勉強も含めたグループワーク等を通じて、自分たちが中心となって発信するアウトプット能力を、若い彼ら彼女らには高めていってもらいたいという想いを持っています。」
Q.会社経営、組織運営についての哲学やポリシーを教えてください
「当社の理念でもあるのですが、やはりチーム力で仕事をしてほしい、これは私が社長に就任する以前からずっと持ち続けている想いです。一人でできる仕事の範囲なんて、かなり限られますからね。1+1は2ではなく、3にも5にもなりますので、人間を点だとすると、一般的によく言われるのは線としてのつながりですが、我々は線ではなく、環(わ)で仕事をしようというイメージのことを、折を見て強く伝えるようにしています。
また、やはり私は人を幸せにすることが好きなんですよ。喜んでもらいたいという気持ちが凄く強いので、こうした思いが福利厚生制度にも出ているように思います。利用してもらえない制度を作っても形骸化してしまいますので、相手の気持になって、本当に使ってもらえる、本当に喜んでもらえるものでなければいけない、というのが自分の軸ですね。
相手に気分良く過ごしてもらいたいという想いが強すぎて、ちょっとしたことでも自分で動きたくなってしまって怒られることもあります(笑)。例えば会社主催の食事会でも、社長だからといってドンと座って参加するのがあまり好きではなくて、みんなと一緒にいたいので大皿料理が出てきたら率先して配膳したり、30名くらい参加していても一人ずつ”お疲れさん”って声をかけながらおしぼりを手渡したり、そういう感覚なんですよね。
バランスという言葉も凄く好きで、頼りにされる人と頼りにする人の関係性もバランスが重要だと考えています。いつも同じポジションの社員さんってどうなのかなと思うところがあって、両方の価値観があれば逆の立場にもなれるのにな、と。
相手の気分を良くしたいのであれば、良いところを見つけるのが最優先ですよね。でも人間って、99個の良いところがあっても1個の悪いところに脳を支配されてしまいがちですから、みんな悪いところを見る癖をなくしていこうね、という姿勢でいるのも私のポリシーかもしれません。みんなには3Cを強調して伝えることも多いのですが、Communication、Conversation、Connection、いずれも気持ちが入っていないと成立しませんから、やはり全ては心、ハートですよね。」
Q.御社の組織や社員の魅力は何ですか?
「社員の最大の魅力は、会社が好きだということです。雰囲気や風土が良く居心地が良い、よく言われる”第二の我が家”でもないですが、そういう気持ちで仕事をしてくれている社員さんも多いと思います。ただ、改めて何か魅力を語るとなると、なかなか難しいですね、私からすると社員みんなが魅力的だと思っていますから。
なぜこのような風土ができたのかということで申し上げますと、6〜7年前のフリーアドレス導入がきっかけではあります。最初はアドレス?住所って何?みたいな感じでしたし、この業界でどこでも自分の好きなところに座るなんて本当にやるの?という声もあったのですが、誰しもやらないだろうと思っていたことを本当にやった時には、机の移動から何からみんながめちゃくちゃ手伝ってくれましたね。
フリーアドレスで毎日決まった席につかないという環境そのものもあるのかもしれませんが、ある種イベント的に、何かをやる時にはみんなで同じ方向を向いて一緒にやろうというきっかけになったように思います。そういう意味で、私はきっかけづくりを積極的に行ってきたほうなのかもしれませんね。
一方で自分自身に起こったきっかけとしては割と明確で、平成24年の産学官連携の一環として行われた「三重県経営者育成道場」への参加が大きかったですね。これは三重大学大学院と三重県庁、そして県内中小企業の三者の更なる連携強化のため、三重県が主幹となり開催していただいたセミナーです。主に、県内中小企業における次世代経営者に対して、ビジネスネットワークや学習機会の支援を行っていただきました。若手経営者が30名ほど参加し、意見交換も積極的に行われたので、グループワーク形式が中心だったと記憶しています。
まず、半年間、週に1回三重大学へ通い、MGゲーム研修など色々な研修を受けて、最終的には自分たちのビジネスプランをプレゼンテーションする場を設けていただいたんです。副学長をはじめ外部からも有識者や有名企業の社長、三重県で言えば”おにぎりせんべい”のマスヤさんなどにも来ていただいていましたね。そこで最終選考の5社に選ばれました。
その5社は更にブラッシュアップ期間があったのですが、ここで私の”世古工務店のSEKOスクリューパイル工法は凄いんだ”という認識が完全に覆されることになります。というのも、その国交大臣認定工法が凄いのではなく、それを開発して製造・施工まで行えているあなたの会社の組織力が凄いんだよ、社長としてはそこに向けて注力していく必要があるよね、という評価をいただいたんですね。
本来マル秘なんてないんだ、またそれを自分たちで生み出せばいいんだという研修を受けたことで、チーム力の向上や育成に力を入れていかなければいけないということに気付かされ、それまではあまり力を入れていなかった新人大工の育成について取り組みをはじめました。コンスタントに新入社員を受け入れるようになったのもこの頃からで、私にとっては本当に大きなターニングポイントでしたね。」
Q.御社のこれからの展望は?
「展望のような格好良いものはないのですが、やはり右肩上がりに成長していく会社って切り離されていく人たちが沢山いると思うんですよ。別に鈍化された右肩上がりでも良いのですが、私としては会社の理念や方向性に共感してくれている、社員さんをはじめとした関係者の方々を、一人も取り残すことがない経営をしてきたいですね。
売上やシェアに囚われすぎると、大切なものを見失ってしまうのではないでしょうか。余談かもしれませんが、自分の子どもに対しても定めた目標を掘り下げるお手伝いをして、”何のためにこれをするのか”という自問自答を繰り返すことが大事だと伝えるようにしています。」